高齢者福祉施設に空気清浄機を導入する場合には、個人宅向けとは異なる視点で選定する必要があります。利用者はもちろん、職員や来訪者など不特定多数が利用するため、感染症対策や施設全体の運用効率を考慮した選び方が重要です。
以下にポイントをまとめました。
1,感染症対策・衛生面
高齢者福祉施設では利用者の免疫力が低い場合も多く、インフルエンザや新型コロナウイルスなどの感染症対策が大切です。
・HEPAフィルター(特にH13やH14クラスなど)搭載モデルは微細な粒子(ウイルス・細菌・花粉・ハウスダストなど)の捕集性能が高く、施設内の空気環境を清潔に保ちやすくなります。
・メーカーによってはUV照射やストリーマ、プラズマ放電といった除菌技術を組み合わせた機種もあるため、除菌効果が期待できるものを検討すると安心です。
2,脱臭機能
・高齢者施設では排泄やリネン類などから生じる特有のにおいが問題になることがあります。
・活性炭フィルターや光触媒などの脱臭機能に優れた機種を導入すると、快適な生活環境を保つのに役立ちます。
3,広いスペースへの対応力
● 適用床面積や台数の検討
・食堂やデイルーム、談話スペースなどの広い共用空間は、個人宅用の小型空気清浄機では対応しきれない場合があります。
・メーカーが推奨する適用床面積(○畳や○m²)を確認し、広い部屋にはそれに見合ったハイパワー機種、もしくは複数台を配置すると効果的です。
● 移動・設置のしやすさ
・部屋のレイアウト変更やイベント時など、場所を変えて使うケースも想定されます。
・キャスター付きで移動がしやすい業務用モデルや、取っ手がある軽量タイプだと取り回しがスムーズです。
・転倒やつまずき事故のリスクを考慮し、コード周りの整理や設置場所にも注意が必要です。
4,メンテナンス性・コスト管理
● フィルター交換・掃除の手間
・介護施設では複数台導入する可能性が高く、その分フィルター交換や清掃作業の負担が増えがちです。
・長寿命フィルターを採用しているか、交換作業が簡単かどうかを確認し、できるだけ職員の手間が減らせる機種が望ましいでしょう。
・フィルターの交換時期をランプやメッセージでわかりやすく通知してくれる機能があると管理がしやすくなります。
● ランニングコスト
・フィルター代が高額だったり、交換頻度が短い機種は長期的に見ると負担になる場合があります。
・24時間稼働させることも多いため、省エネ性能もチェックし、電気料金を含めたトータルコストで比較することが大切です。
5, 静音性・利用者の快適性
● 共同生活空間での騒音対策
・多人数が生活する施設では、常に運転音が鳴り続けるのは利用者のストレスになります。
・就寝スペースや静養室では、できるだけ運転音の小さいモデルや静音モード搭載モデルを選ぶと良いでしょう。
・機種によっては加湿機能などを併用すると運転音が大きくなることもあるため、運転音(dB表記)をカタログで確認しておくと安心です。
6, 安全性
● 転倒・設置リスクへの配慮
・大型の業務用モデルなどは高さや幅があるため、利用者の通行の邪魔にならないようなレイアウトを検討しましょう。
・施設内の動線を踏まえ、コードが足元に絡まないよう配線にも注意が必要です。
7, 加湿機能の有無
・冬場の乾燥は感染症を助長したり、利用者の肌や気道のトラブルを引き起こしやすいです。加湿機能付きなら乾燥対策にも有効でしょう。
・ただし、加湿フィルターやタンクの清掃が必要となり、メンテナンス頻度が増える点はデメリットです。
・一方で、適切な湿度管理はウイルス抑制にもつながるため、導入メリットは大きいといえます。